ISO審査に必要な審査時間、審査日数はどのように決まる?
日本を含め世界各国で多くの組織(企業・団体など)がISOの認証を取得され、またこれから認証の取得を検討されている組織も多くおられます。
ISOの認証を取得したり維持するためには審査を受ける必要があり、弊社にも審査登録に関するご質問を多く受けますが、その中で以下のようなご質問を受けることがあります。
質問例
- 審査に必要な時間、日数はどのように決まるのか?
- 他の審査機関だったらもっと日数が少なく済むのか?どこも一緒なのか?
- 対象人数を半分にしたら審査日数も半分に済むのか?
これらのような疑問をお持ちの方に向け、本稿では「ISO審査の時間・日数はどのように決められるのか」をご説明いたします。
審査時間・日数の元になる国際基準とは
まず結論から申し上げると、審査にかける時間・日数の算定方法は国際的な基準が定められています。そのため審査にかける時間・日数を審査機関が勝手に変えることはできません。
この審査時間・日数を「審査工数」と言います。(以下では審査工数と記します)
ISOの中でも品質、環境、情報セキュリティ、労働安全衛生などの審査工数に関する国際基準は以下の種類があります。
- ISO/IEC17021-1
- ISO/IEC27006
- IAF MD1
- IAF MD5
上記の国際基準には「必要な審査工数の算定方法・考え方」が定められています。
そして各審査機関はこの国際基準に沿って「審査工数の算定基準」を作成し、各審査の審査工数を算定します。
(例えば日本の会社は日本の法律・条令などに沿って社内の規則類を定めますが、それと同じような感じです)
それではなぜこのような国際基準が定められているのでしょうか?
それは「審査を受ける組織の仕組みがISO規格の内容に合っているか、効果的に運用しているか」をシッカリ確認するために必要と考えられる審査時間を国際的に定めているものです。
そのため審査にかける審査工数は概ねどの審査機関でも同等となります。
また審査を受ける皆様には、これはISO認証に必要な時間だということをご理解いただければと思います。
国際基準に準じた審査時間・日数の算定方法は
次に、具体的に審査工数がどのように算定されるか、簡単にご説明します。
「審査工数算定の流れ」
- 国際基準の「工数表(マトリックス表)」と対象の要員数から基本となる工数を算定
- (対象事業所が複数ある場合)対象事業所ごとに「工数表」と「事業所の要員数」で各事業所の工数を算定し合算 (ISO9001、ISO14001、ISO45001等)
- 各規格ごとに事業リスク、環境リスク、情報セキュリティリスクなどの要因を加味し、1. 2.で算定した工数を増減し審査工数を確定
概ね上記(1)→(2)→(3)のステップとなります。
まずステップ(1)ですが、各規格ごとに国際基準の中で以下のような工数表があります。
初回審査工数のマトリックス表(IS09001の場合)
有効要員数 | 審査工数 | 有効要員数 | 審査工数 |
---|---|---|---|
1~5人 | 1.5 | 626~875人 | 12 |
6~10人 | 2 | 876~1175人 | 13 |
11~15人 | 2.5 | 1176~1550人 | 14 |
16~25人 | 3 | 1551~2025人 | 15 |
26~45人 | 4 | 2026~2675人 | 16 |
46~65人 | 5 | 2676~3450人 | 17 |
66~85人 | 6 | 3451~4350人 | 18 |
86~125人 | 7 | 4351~5450人 | 19 |
126~175人 | 8 | 5451~6800人 | 20 |
176~275人 | 9 | 6801~8500人 | 21 |
276~425人 | 10 | 8501~10700人 | 22 |
426~625人 | 11 | >10700人 | 上記増加率に従う |
まず、審査を受ける組織の対象要員数と上記の表を照らし合わせて基本となる工数を算定します。(※上記はISO9001の表となります)
なお上記の表は「初回審査」の工数です。
「サーベイランス審査(定期審査)」は概ね上記の1/3、「更新審査(再認証審査)」は概ね2/3が目安となります。
次のステップ(2)は少々複雑です。
「対象事業所が複数ある場合」は各事業所ごとの要員数とマトリックス表を照らし合わせ、それぞれの事業所の工数を算定しますが、一般的に各事業所の担っているプロセスは部分的に限定して行っています。
そのため各事業所の担っているプロセスの程度を勘案し、工数表から当てはまる工数を削減し、それらを合算していきます。
削減の詳細は複雑なため説明を省きますが、概ねこのように算定し合算していきます。
最後のステップ(3)も少々複雑な部分です。
ISO規格には品質や環境、情報セキュリティや労働安全衛生、食品安全など多数の規格がありますが、それぞれにルールが異なります。
事業や製品サービスのリスク、対象製品・サービス、組織の複雑さ、事業の複雑さ、規制、サイトの広さ、外部委託の程度、事故の有無、など多数の要因が関係し審査工数の調整が行われます。
審査工数の算定は上記(1)~(3)のステップを踏んで行われることを国際基準の中で定められており、世界中の審査機関がこれに従って工数を算定し審査を行っています。
「対象人数を半分に減らしたら審査工数も半分にならないか?」などのご質問をいただくことがありますが、そのような対応は出来ないことをご理解いただければと思います。
まとめ
本稿では審査工数の算定についてご説明してきました。
審査工数について、適切な審査を行うために国際基準が定められており、各審査機関は国際基準に沿って算定していることをご理解いただければ幸いです。
- 日本検査キューエイ(JICQA)の特徴
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- 日本で最初に設立された審査機関(1992年10月)。30年、9000件近くの審査登録実績
- 国内企業のニーズにお応えすべく多種多様な規格へ対応
- 国内審査機関の中で有数の社員審査員数(約150名)
- 企業の改善に寄り添えるよう6年間同一の審査チームリーダーが担当
- アフターフォローに注力(毎月のニュースレター/年2回の機関誌(運用事例・最新情報・法令改正情報等)/全国4か所に事務所/無料セミナー・有料セミナー開催、等)