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JICQA NEWS 49号 巻頭言
「高めよう信頼と価値!!」を念頭に
代表取締役社長
川﨑博史
昨年来、自動車や鉄鋼大手企業の品質に関しての不適切問題が発生し、「ものづくり日本の危機」とまで言われ、信頼を損ねると同時に世間を騒がせています。
今回の特に鉄鋼素材のような場合には、守るべき品質基準がJIS基準、顧客との協定、社内基準等によって企業側の順法の意識も微妙に異なっていたり、ルールを守ることと製品(モノ)が安全であることが必ずしも一致しない等デリケートな問題が根底にあるとのことです。その後、事の背景が種々判明してきていますが、「コストや納期」を優先するがあまり品質がおろそかにされた等、何となく現場の問題に取られがちではありますが、それほど簡単な問題として片づけられる問題でも無さそうです。
私自身品質管理の現場にいた経験からも、今回問題となっている検査部門は、確かに品質の最後の砦であるにも関わらず、実際陽の当たらない地味な部門で、すべての皺寄せが最後に来る場所です。しかしながらどのような場合にも現場単独では決して判断することはありません。そこはサラリーマンですから上司や会社の指示は絶対ですので「ノー」とは言えないわけですが、突き詰めていくとほとんどの場合がマネジメントに起因する問題と言えます。しいて言えば、結局は経営を含めたマネジメント層のコンプライアンス意識の問題が根底にあると言っても過言では無いと思います。
以上が今回の事件の企業体質面での問題ではありますが、翻ってこれら組織のJISやISO認証を行っている我々認証機関としても考えるべき点が多いと思っています。ISOの有識者の先生方は「ISOシステム認証審査は結果のレビューが主で、しかもサンプリングによるものであることからも今回のような事象を検出することは困難」とコメントされております。それはその通りではあるのですが、一般の皆様方からは「なぜ審査で見つけられなかったのか」といったご指摘があるのも事実です。
システム認証の限界であるとは思いますが、我々認証機関としては今回のような品質不正を直接見つけることは困難としても、如何にそういった不正を許容する組織の企業体質、品質保証の仕組みやシステム、しいてはガバナンスそのものの脆弱性を的確に指摘し、組織の改善活動に繋げて行けなかったのだろうか、といった点で真摯に自らの審査を再点検してみる必要があるのではないかと思います。まさにこういったことを認証機関として追及していかなければ我々JICQAの存在価値はありませんし、ISO認証そのものの価値の低下につながるのではないかと考えます。現に今回の大手自動車会社ではISO認証を取り消されても商売上は何ら困ることは無い、と言ったマスコミ報道も見られたくらいです。
世の中、政治や国際情勢の不安定化や、天変地異の劇症化、少子高齢化による産業人口の減少懸念、それに呼応したように進む科学技術の発展に追従困難なセキュリティーリスクの高まり、まだまだ無くならない悪意のあるものを含めた企業の不祥事等々、不透明で不確かな時代に突入しています。こういう時代こそ人は皆、より確かなもの、すなわち「信頼」を求めるようになり、それこそが「価値」なのだと考えます。まさに我々認証機関の出番であると共に、社会的な要請、責任が高まってきていることを自覚せねばならないと考えています。
以上を踏まえ、JICQAの今年のスローガンは「高めよう信頼と価値!! 目指そう進化するJICQA!!」としています。かねてよりJICQAは「JICQAのアイデンティーの構築」を進めております。今回の件も教訓に、まさに組織の皆様の体質的なシステム的な弱点を的確に指摘できる、「審査の信頼と価値」を念頭に、「組織の経営にお役に立てる審査」をこれからも追及して参る所存でございますので、今後とも弊社を広くご活用いただきますことをお願い申し上げます。