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ISO審査登録・JIS製品認証・GHG排出量検証

日本検査キューエイ株式会社

JICQA NEWS巻頭言バックナンバー

JICQA NEWS 36号 巻頭言

経験を生かす

代表取締役社長
樋口 宗之

東日本大震災から、はや半年を過ぎました。今までに経験したことのない大地震、大津波であり、日が経つにつれ、起こったことの重大性とその規模の大きさ、 復興の大変さを考えさせられます。想定していなかった規模の災害ですから、復興計画とその実行も手探り状態になるのも仕方のないことだと思います。 JICQAの登録組織で甚大な被害を受けて残念ながら事業継続が不可能になられた方々数社を除き、大半の組織様は、復興に向けて着実に歩み始めておられま す。その力強さに感服する次第です。災害復興に何年もかかるでしょうが、JICQAは微力ながら応援を続けさせていただこうと思っています。

今までに経験したことのない事態といえば福島原発事故もそうです。事故発生後の対応のまずさにより、政府関係者に対する不信感が生まれました。2次被害 ともいうべき放射能汚染対策が後手後手にまわってしまっています。そして既設の原発の安全性議論が空回りしており、原発全て悪というマスコミも現れたりし ています。福島の原発事故が起こる前は地球温暖化問題が議論され、原子力発電が、次世代エネルギーの主力にならざるをえないというのが日本だけでなく世界 の一般的評価であったと思います。今回の事故を契機に高くて、ペイしなかった再資源化可能エネルギーの開発に目が向けられるようになったのは良いことだと 思います。高くても使うという極めて政治的な判断をすれば良いだけだと思います。今までは、エネルギーを自由に使いすぎていたと思います。

原発は怖いから即時停止すべきであり、他国から原発電力を買っても自国だけは原発設置しないと決めたドイツは国際的に身勝手であると思います。世界中の原 発を停止することは現実的ではないと思います。原発の安全性が万全でないというなら安全になるようにとことん対策を打てば良いと思います。必要なら必要な だけ金をつけて安心できるまで対策を打つべきだと思います。今までの原発に経済合理性が働いていたと考えるのが間違いだと思います。安全対策には国際標準 を作るべきであると思います。

しかし、開発や世界的合意には、時間がかかりすぎ、地球が茹で上がるほうが早くなる危険性が大です。それまでは、原子力発電を事故なく安全に使いこなさなければならないと思います。福島原発事故は、日本だけでなく世界中の経験として生かさなければならないと思います。

私は、長年製造現場の長をしてきました。「安全第一」を徹底してきました。「世の中に存在するのは、危険(リスク)であり、自然界に安全は存在しな い。」見えている危険だけでなく隠れている危険を見つけ出し、危険でない状態にすることを安全活動と呼びます。街を歩いていてもいつ塀が倒れてくるかもし れないし、いつ車が飛び込んでくるかもしれない。身の回りは危険だらけなのです。一見安全と思っても本当かと疑って安全を確保しなければならないのです。それでも想定しえない事故が起きるのです。

原子力行政の中での「安全神話」はとんでもないことです。危険なだけにありとあらゆることを考え、何重にも安全対策を打たなければなりません。それでも安 心できなければそんなものは、動かしてはならないのです。その判断を原発関係者だけに委ねていたのが間違いです。今回の事故は、多くのことを教えてくれた と思います。良い経験だと思います。事故の経験が少なかったことも(これ自身が発表通りか疑われますが)安全神話を助
長したと思います。経験してもそれから得た知見を生かさなければなりません。原発問題は、慌てて結論を出すのではなく、被爆国日本ということで過剰に嫌う ことなく、人類がどのように対処するべきなのかを十分議論して欲しいと思います。日本の議論が世界の議論になるためにも、被爆国日本が経験したことを生か さなければなりません。

今月は釈迦に説法になってしまい何をえらそうにというお叱りを得そうですが、拙い私の経験談をお話します。
経験と熟練とはどう違うのか?技術者と職人の差は? 私は、学卒新入社員の新入社員教育で、問いかけるように心がけています。きっかけは入社3年目くら いの大学院卒エンジニアが辞めたいと相談に来たことからです。彼は、製鉄設備の設計、開発のホープとして育てていたのですが、「きれいな図面を書けなけれ ば一人前の技術者ではない。大学では、図面の読み方、書き方などは習ったが十分に教えてもらっていない。3年間くらい図面屋として教育を受けた後設計業務 を行いたい。」というものでした。私は「同じことを繰り返し経験し上手になった人を熟練者と呼ぶ。違ったことを数多く経験した人を経験者とよぶ。」「君を 職人として採用したのではなく、新しいことを産み出す技術者として期待している」と説得しました。彼の職場には、豊富な経験を熟練の域にまで高めた60歳 ちかくになる先輩が2,3人おりました。先輩達の知識と経験は、非常に優れており、私も仕事の精度、姿勢に全幅の信頼を寄せ重宝させていただきました。安 心して仕事がまかせられるのですから当然でしょう。しかし、私は、新しいことを産み出すのは、技術者である自分たち若手であると自負していました。先人の あとをなぞることは、自分を教育する上で非常に効率的です。しかし、その通りのことを時間をかけて体験しなくてもなぞることは、できます。他人の経験を自 分の経験にしなくては、先人を追い抜くことはできません。先人も毎日経験を積み上げているのですから。

他人の経験を自分のものにするには、直接その人に聞くに越したことはありません。それができなければ関係者に聞くとか、本を読むことでしか経験できませ ん。大事なのは、その経験から何を学ぶかということです。そして記憶に残さねばなりません。過去の経験を思い起こして初めて経験が生きるのです。いろんな ことを良く知っている人をそれだけで経験者とは言わないと思います。経験者には、適切な判断ができる人という尊敬語のニュアンスが含まれていると思いま す。経験といってもそっくり同じという経験は稀だと思います。経験を生かすとは、いろいろな経験を応用することだと思います。その時にさまざまな経験のエ キスを抽出しやすく記憶しておかねばなりません。人間は、よく出来ていて、当座必要な事象の記憶と永年記憶に留まる事象を選別しています。直近1週間の3 食のおかずを聞かれてすらすら答える人は少ないけれど2,3日前まではなんとか思い出します。物事の重要性に応じて記憶期間を自動的に決めているようで す。嬉しかったこと悲しかったこと深く感動したことは、何十年経っても覚えています。私は、最近は、都合の悪いことは、自動的に削除されています。(笑)

仕事に役に立つ経験の覚え方は、自分ならどうするか、どうしただろうかを常に自問することだと思います。他人の経験を自分の経験にするには、「なるほどそ ういうことか、」知らなかったなあ」とまず感動し、「自分ならどうしたら良いのだろう」と考える習慣をつけることだと思います。そうすると自分の身の回り の事象にあてはめてみるようになります。

ISO活動は、全員参加の活動です。一人の経験だけでなく全員の経験をPDCAを回しながら組織みんなの経験にし、経験したことのないことにも対処していく力をつけていけると思います。

JICQAでは、数多くの経験をマネジメントの世界で体験し、審査を通して数多くの経験をした優秀な審査員を揃えています。ISO審査活動を通じて受審組織のお役にたてるよう努力をいたします。

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